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2003年5月5日 産経新聞朝刊
経済紙誌を読む 「脱小泉構造改革」の気配
市川アソシエイツ代表 市川周
 「日本経済はこれから『本当の地獄』を見る」というのは週刊エコノミスト誌(四月二十九日・五月六日合併号)の特集タイトルだが、そのプロローグ論文で額賀信氏は日本の構造問題の根本に「自立・自尊の心」の喪失があると指摘する。財政破綻(はたん)にしろ、不良債権にしろ自分たちの世代だけで解決しようとはしないパラサイト(他者依存)化が進行しているという。
 一方でこのタイトルにぞくぞくっとくる脱パラサイト派もいるに違いない。地獄が来るものなら来てみろというか、ここまでデフレ不況が深刻化し、長期化すると一気に片付けてしまいたい衝動にかられなくもない。座して死なぞ待つものかの心意気だ。
 そんな思いを強くしたのが四月三十日付日本経済新聞に掲載されたスティグリッツ米コロンビア大教授を囲むシンポジウムの討論内容である。一昨年、ノーベル経済学賞を受賞したこの学者の日本経済再生への提言は大胆だ。
 日本資本主義にポッカリと開いた“二つの大穴”すなわち国内総生産(GDP)比130%に達している財政赤字(約七百兆円)と、銀行が抱え込んでいる膨大な不良債権(前出のエコノミスト誌特集では小関広洋氏が百兆円を超えると推定)。この“二つの大穴”を埋めるべく、日本政府自身が日本銀行の発行する日銀券の他に「政府紙幣」なる流通貨幣を発行すべしと主張する。
 日本経済新聞が「政府紙幣」の問題をこれほど、明確に紙面に登場させたのは、このシンポジウム記事が初めてではないだろうか。それじゃ同紙は「政府紙幣」策に賛成なのか反対なのか。この点についてはもう一つはっきりしない。
 「政府紙幣」策が、結局は日銀の国債引き受けという形にすり替えられるとしても、小泉構造改革路線を否定することになる大型財政出動時代の到来を意味しよう。このシンポジウムには日経サイドから論説主幹の岡部直明氏および日経センター理事長の八代尚宏氏が加わっていたが、「政府紙幣」の是非や大型財政出動についてストレートな批判はなかった。
 日経センターについては四月七日付の本欄で紹介した超大型の財政出動論者である小野盛司氏が、同センター保有のNEEDS日本経済モデルを使って、国債あるいは政府紙幣を大量発行してもハイパーインフレにならないことを検証している。
 「何をやっても問題が解決しない。当事者にはそんな徒労感もあるかもしれない」(五月一日付社説)と言いながら、その当事者意識を持ち続けてきた日本経済新聞に「脱小泉構造改革」の気配が出て来た。
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