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政府との質疑応答
165-参-内閣委員会-4号
平成18年11月14日
亀井郁夫氏の内閣委員会での質疑
【亀井郁夫君】
 最後ですけれども、よろしくお願いします。
 大臣が内閣に来られたのは、今を去る四年前ですかね。ちょうど私が内閣府の大臣政務官しているときだったので、立派な方と思っておりましたけど、本当におめでとうございます。よろしく、頑張ってくださいね。今日は何問か質問させてもらいます。
 それでは、最初にお尋ねしたいのは、安倍総理は成長なくして財政再建なしというふうにいつも言っておられるわけですけれども、小泉総理は改革なくして成長なしということを言っていたんで、よく聞くと卵が先なのか鶏が先なのかよく分からないというところもありますし、しかし、安倍総理自身が小泉さんを引き継いで後をやるということだったんだから差がないんじゃないかと思うけれども、しかしリチャード・クーなんかは小泉政権の否定だというふうな言い方をしておりますし、率直なところどう考えたらいいのか、これについてお話し願いたいと思います。
【国務大臣(大田弘子君)】
 小泉内閣は、バブル崩壊後の長い低迷を脱却してこれから先の道筋を付けていくということで、広い範囲の構造改革が避けられませんでした。その意味で改革なくして成長なしということだったと思います。現在は、長い低迷をようやく脱却して、経済が正常な状態に戻りつつあります。安倍内閣は、その状態を引き継いで、今度は人口減少という新しい課題の中でどうやって持続的な成長の姿をつくり出していくのかと。あわせて、車の両輪として、財政の健全な姿を取り戻していくという、この二つの課題を抱えているというふうに思います。
 そういう意味で、この安倍内閣の改革の姿勢、経済政策の体系というのは小泉内閣の後をそのまま連続して引き継いでいるものであると。経済の状況が変わってきて課題は変わっていますけれども、経済政策の体系は小泉内閣のときの政策を引き継いでいるものだと考えております。
【亀井郁夫君】
 今のお話で、小泉総理の後を引き継いでやるんだということで、基本的には一緒なんだということでございますけれども、経済成長がやはり大きな課題だと思いますね。
 それで、経済成長について、日本のGDPは、しかし減少こそすれ増えていないので、五百十何兆のやつが四百九十二兆かな、そんなふうに減っちゃって、今ちょっと増えているけれども、雇用者の方々の報酬も減少していると。二〇〇〇年に二百七十一兆あったのが、二〇〇四年には二百五十五兆になっていると。そしてまた、家計可処分所得が、二〇〇〇年には二百九十七兆あったのが、二〇〇四年には二百八十六兆ということで減っていると。ただ、企業所得については、二〇〇〇年三十三兆が三十八兆とちょっと増えておりますけれども、これはどういうことかというと、結局、国民の方には回ってきていないという状況ですね。
 政府は、経済が回復しつつあると、今大臣もおっしゃったけれども、回復してきたと、それがイザナギ以来の景気拡大だというようなことを言われて宣伝しているけれども、あのときは随分違うんじゃないかと私は思うんですね。名目GDPは年率一七・三で、あの期間に二・二倍に増えているということだし、このことは今日お配りした資料にも書いてありますが、GDPのデフレーターは五・七%と、だから実質で一一・六というふうなことで、今と全く違うんで、それがイザナギ景気なんかを引き合いに出してそれより長いんだといって、国民を正にだましていると私は思うんですね。だから、やはり率直にあのときとは違うんだということをやっぱり言うべきではないかと思うんですよね。
 今、デフレ下にありますから、デフレーターがマイナスですから、結局マイナスからマイナスでプラスになっちゃって、それでプラス成長だなんて、実質がプラスだなんて言っていますけれども、これも皆さんに今日配ったレジュメの左側にも書いてあるように、デフレーターがうんと下がって、その結果上がっているだけのことなんですね。
 そういうことで、GDPでいえば一人当たりの、OECD、前は一位になったり、二〇〇一年には五位だったと思うんだけれども、それが今は十六年には十一位に転落しているというふうなことになってしまって、国民の実感がないわけですね、全く。このような状況で経済は成長していると言っていいんでしょうかね。大臣の率直な御意見を求めたいと思います。
【国務大臣(大田弘子君)】
 今回の景気回復はその実感が乏しいというのはよく指摘されるところです。
 背景として、私は三つあると考えております。
 一つは、今回の景気回復は、バブル崩壊後の負の遺産を抱えながらデフレの中での回復過程でした。したがって、企業は厳しいリストラを迫られて、その中で、そのリストラを伴いながらの回復であると。したがって、なかなか雇用や賃金というものにつながっていかない。企業から家計へのその波及が非常に時間が掛かっているという点が一点です。それから二点目といたしまして、公共事業ではなくて民間需要に支えられた景気回復だという点がございますので、地域間の回復のばらつきが大きいということがございます。三番目として、正に今先生が御指摘のように、期間こそイザナギ景気に並ぶんですけれども、その間の成長は非常に緩やかなものにとどまっております。
 こういうことで、実感がないというのはそのとおりだと思いますが、今先生がお挙げになった数値は名目成長率、名目の数値です。生活実感というところからいいますと名目の数値が重要ですけれども、経済活動の水準を示すものとして私は実質成長率というのもやはり重要だと考えております。
 実質成長率で見ますと、平均して二・四%の成長が五年間、五年近くにわたって続いていると、このことはやはり意義があるのではないかと考えています。逆に、この成長をなるべく持続させていく、じわりじわりと持続させていくことによって企業から家計への波及が徐々に進んでいくということを期待しております。
【亀井郁夫君】
 今大臣が言われたようないろいろなことをはっきり国民に知らしてほしいと思います。特に、実質が大事だと言われるけれども、それだったら、ここの図面のようにこのデフレーターがずっと下がってくるわけですね、ずっとね。だから、どんどんどんどん下がれば下がるほど実質は良くなっちゃうということで、安倍内閣はデフレーターを下げ、下げるためにあるのかということになったんじゃおかしいんで、ここにも書いてあるようにGDPそのものがもっと回復して、名目がやっとこさ五百十兆円、そういうことじゃなしに、もっとよその国と同じように、やっぱり四〇、五〇%増えている国に負けないように増えていくべきだと私は思うんだけどね、その点についてはどう思われますか。
【国務大臣(大田弘子君)】
 御指摘のように、デフレを脱却して安定的な物価の下で成長するというのは大変大事なことで、デフレ脱却は、今デフレ脱却を確実なものにすることは今の日本経済の大きい課題だと考えております。
 GDPデフレーター、実際マイナスですけれども、今日発表になりました七―九月期のGDPでマイナス〇・八%、これもマイナスではありますが、四月―六月はマイナス一・二%でしたのでマイナス幅は少しずつ縮小しておりまして、今デフレ脱却が視野に入ってきたというふうに考えております。これを早く確実なものにするというのは、御指摘のとおり大変重要だと考えております。
【亀井郁夫君】
 おっしゃるように、デフレからの脱却は大きな課題ですから、そのためにも全力を挙げて頑張ってほしいし、そのための施策をいろいろと講じてほしいと思うんですね。
 ちょっと声が、のどを痛めておって声しゃがれてますんで、ちょっと済みませんけどね。
 その次に国債発行の問題、これもデフレの問題に絡むんだけれども、三十兆円以下にするということで小泉総理は約束されて、実際にあの小泉総理も、守ったのは総理大臣になってすぐとそれからこの最後の年というだけで、この程度の公約を破るのは当たり前だ、大したことはないと、こう言われたんですけれども、安倍総理はそれだけの気持ちがあるかどうか分からないけれども、しかし大変なことだと私は思うわけで、大臣の部下のところで、内閣府でシミュレーションやった経済財政モデルについて見ると、五兆円を国債発行して、これを所得減税に使えば、名目のGDPは〇・七八%上がり、実質GDPで〇・六五%上がると、そして消費者物価は〇・一六%上昇だということですね。それからさらに、公共投資に五兆円使えばGDPは一・三五%上昇、実質のGDPは一・一三%上がると、消費者物価は〇・二八%上昇するということで、また国の債務比率もGDP比は一・二三%良くなるというふうなことで、いいことが非常に多いわけで、あなたの部下にはなかなか優秀な方が内閣府の計量分析室でやっているんですね。
 ところが、総理は見ておられないんじゃないかと思うんだよね、この資料をね。我々も余り見てなかったけどね。見てないで総理は言っておられるんじゃないかと思うんだけれども、その上での判断なんですか。ちゃんと大臣、こういうところまで総理に説明しているんですか。まずそれを聞きたいと思います。全然違うんですよね。
【国務大臣(大田弘子君)】
 今挙げていただきました数字は公表しておりますので、当然お目に留まっていると思います。
 今の数字は、減税ですとか公共投資という財政出動したときの波及効果、これを乗数と呼んでおりますけれども、それがどれぐらいの効果を持つかというのを試算したものです。このような乗数、財政出動いたしますと、一般論としましては短期的に経済を拡大する効果を持ちます。持ちますけれども、それを中長期的に見ますと、中期的には債務残高のGDP比が拡大するというマイナス面がございます。したがいまして、この短期的な効果と中期的なマイナスを両方勘案して判断を下す必要があります。
 安倍内閣の下でも、経済と財政を一体のものとしてとらえて成長戦略をつくる必要があると考えています。
【亀井郁夫君】
 今の乗数効果は公表されているけどね、まあ総理がどうか知らないから、大臣としてその辺を十分説明すべきだと思いますね。
 それから、毎年やったら将来悪くなると言われるけどね、この数字見たら悪くなる数字じゃないんですよね。例えば、公共投資に使っても名目GDP比は五兆円ずつ使っていけば先々はもっとよくなるということで、今は、初年度はプラス一・三五%だけれども五年後はプラス一・四五%と出ているし、そういう意味で必ずしもそうじゃないと私は思うんだけど、昨日説明に来た事務局の方は、六年から十年までのやつもやっていると言っているけど、僕のところには五年までしかないんで、もうちょっとこの辺も詳しく勉強する必要があると私は思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。実際、このおたくの資料を見て言っているんですけどね。まあ、そういうことですから、よろしくお願いします。どうもそういう意味では、総理のやり方は逆の方向のような気がして仕方がないので、お願いします。
 それから、今度は、なぜ国が純債務で説明しないかという問題ですね。これも国や地方合わして八百兆円になるとか八百三十兆円、そういうことを言ってGDPに比べて非常に高いということで危機感をあおっているけれども、多額の債権五百三十兆円持っているので、引いたら三百兆円だけになってきて、これ資料配っているように、よその国とちょっと高いだけで、そんなに高過ぎるわけじゃないわけですね、これ見るとね。
 そうすると、普通、人間の家計を考える場合でも、借金と同時に、貯金と一緒に考えるのが当たり前なんで、借金だけ考えちゃいけないんで、一度アメリカの評価会社が日本の国債を格付を低くしたことがあって、そのときに慌てて財務省が盛んにこの純債務で説明したことが一度だけあるけど、あとは何も言わないということで、粗債務だけをもっていろいろ議論していると。やはり、純債務はこうなんだという辺りを説明すべきだと思いますけど、どうですか。
【国務大臣(大田弘子君)】
 先生がおっしゃいましたように、政府の債務残高を測る指標としまして、負債から金融資産を引いた純債務というものが用いられることはございます。ただ、日本の場合は、年金の積立金が比較的大きい金融資産になっております。この年金の積立金は、いずれ年金の支払に向けられる資産ですので、これを、取り崩すことが決まっているものを入れたままで国債とか地方債の償還や利払いの財源を考えるということはやはり望ましくないのではないかというふうに考えております。
【亀井郁夫君】
 大臣がおっしゃるように、年金関係を入れるのはおかしいというんなら、その分を引くという格好でやるとかね、やっぱりもうちょっとその辺を丁寧に考えるべきだと思うんですね。国の方は債権を持っているんだからね。国の持っている、外債まで買っているんだから。そういう意味では、債権の関係を十分入れながらそういうふうに考えるべきだと思いますが、どう思われますか。
【国務大臣(大田弘子君)】
 幾つかの角度から御指摘のように見ていきたいと考えております。
 ただ、OECDの国際比較をしますときは総債務という形で比較いたしますので、そのときはやはり総債務で比較することが必要だと考えています。
【亀井郁夫君】
 次に、公共事業費のことについてお尋ねしたいと思います。
 公共事業費は悪だというふうな考え方でどんどんカットしているんですけれども、山地が八〇%を占めているというようなことやら、台風が多い、地震もよく来ると、海岸線も長いというようなことを考えますと、公共事業費について欧米並みに抑えていくべきだという小泉総理の考え方はおかしいんで、やっぱり考えていかなきゃいかぬと思います。
 それで、公共事業予算が減ってきたものだから、社会資本の自然減少分、いわゆる民間でいうと減価償却になりますけれども、それが下回ってきたということで、これは大きな問題だといって、元経済企画庁の経済企画審議官で、現在、国際大学や筑波大学の名誉教授をしている宍戸さんとこの間会いましたら、警鐘を乱打しておられる論文を書いておられるわけですが、これは大事だと思いますけれども、どうお考えですか。
【国務大臣(大田弘子君)】
 宍戸駿太郎さんがエコノミストに書いておられた原稿を私も拝見しました。社会資本ストックが減少してしまうことで社会全体の生産性が落ちるのではないかという警鐘を鳴らしておられる原稿で、確かにこれはそのとおりだと思いますが、一方で、社会資本整備のために国の債務残高がどんどん増えていきますと、それが金利の上昇を通して民間の投資を減らすということも考えられます。
 先生御指摘のように、必要な社会資本というのは整備しなくてはいけませんので、だからこそ、無駄を省いて重点化、効率化を進めるということが必要だと考えています。
【亀井郁夫君】
 いろいろとありましょうけれども、赤字国債がどんどん出るのは良くないけれども、建設国債であれば子や孫のためにやはり出してもいいんじゃないかと私は思うんですけれども、それについてはどう思われますか。
【国務大臣(大田弘子君)】
 社会資本を償還するのは、それを使う、今の世代だけではなくて、使う世代全体で償還するという意味で元々建設国債というのは発行が認められてきたわけですけれども、余り債務残高が積み上がったときに、金利を上昇させて民間投資を抑制するという効果については同じですので、その点はやはり気を付ける必要があると考えます。
【亀井郁夫君】
 次にちょっとお尋ねしたいのは、現在FRBの議長をしておって、元CEAの委員長のバーナンキさんが日本に来られて、ちょっと前ですけれども、日本金融学会の六十周年記念大会で演説されたと。そのときに、日本はGDPが増加すればいいんだ、GDP比で見た借金の比率がひたすら減少して財政は健全化する、財政問題解消に役立つ方策としてGDPの名目成長とそれに伴う税収が一番だと、それに勝るものはないんだというところまで喝破されているんだけれども、どうお考えですか。
【国務大臣(大田弘子君)】
 経済成長を高めることができれば、それに伴って税収が増えると、併せて債務残高のGDP比も抑制されるということが先生の御指摘であるとすると、確かにそれはそのとおりだというふうに思います。思いますが、短期的ではなく、人口が減る中で長期的に成長を持続させていくためには、やはり生産性をしっかり上げていくことが必要で、イノベーションですとか、あるいはグローバル化への対応というのが必要になってくるというふうに考えております。
 債務残高がやはり増えていきますと、それが中期的には経済成長も抑制するということがありますので、やはり経済成長と財政再建の車の両輪というのは必要だというふうに考えます。短期的に経済成長を一時的に上げるだけの政策というのは、人口が減少する中では特になかなか取りにくいというふうに考えます。
【亀井郁夫君】
 いろいろと長期的に考えるんだとおっしゃるけれども、やはりまだまだ考える余地があるんじゃないかと思いますから、しっかり考えて過ちなき方策をやってほしいと思います。特に、経済財政担当の大臣として頑張ってくださいよ。
 特にそういう意味では、備中の松山藩に、そこいつも通るんですが、そこの山田方谷さんが、幕末に非常に破産しておった備中松山藩を再建したということでみんな喜んでおって、方谷駅だとか方谷橋だとか方谷公園なんかありますけれども、大田公園ができるように頑張ってほしいと思います。
 以上で終わります。
【委員長(藤原正司君)】
 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
午後四時三十二分散会
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