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政府との質疑応答
平成19年3月23日提出
経済モデルによるシミュレーションに関する再再質問主意書
提出者 滝 実
平成19年2月13日提出の経済モデルによるシミュレーションに関する質問主意書に対する平成19年2月23日に答弁書(第1次答弁書と略称)をいただき、これに関して平成19年3月1日提出の再質問主意書(再質問主意書と略称)に対する平成19年3月9日の答弁書(第2次答弁書と略称)には、「経済財政モデル(第2次版)」における乗数表は、あくまで計量経済モデルの特性を検討するために作成したものであり、また、計量経済モデルによる計算結果は、誤差を伴うため、相当の幅をもって解釈すべきものである」と記されている。このことに関連して以下の点を再度質問する。
一 内閣府のモデルは誤差が大きくて信頼性を欠くという指摘はある。例えば、平成17年4月に発表された「日本経済中長期展望モデル」では民間住宅資本形成の決定係数は0.068、それ以外にも決定係数が0.1を下回るものがある。このような方程式を使うと誤差が大きくなり、信頼性を欠くという指摘を受けるのは当然である。そのようなモデルを使用した結果を引用した経済財政白書や「日本21世紀ビジョン」「改革と展望」「進路と戦略」も政府の経済政策を行う上での参考として使われている。
それらと同程度の信頼性で「金融政策とセットにした財政出動が財政を健全化する」という計量経済モデルの結論は参考にされるべきではないのか。何となれば第1次答弁書には、「計量経済モデル(第2次版)においては、・・・継続的に・・・景気刺激策を行った場合について、・・・公債等残高の国内総生産比率は、当初の1年目及び2年目は低下するが、3年目以降上昇すると考えられ、中期的にみて財政健全化に寄与しない可能性があることが示されている。」と記されており、ここでは、誤差を問題にしていないからだ。
二 内閣府の試算は、誤差があるにしても金利を低めに誘導しながらの財政出動は、経済成長を加速し、デフレ脱却を助け、財政を健全化する可能性が高いことを示している。仮に、政府日銀がそれと反対に金利を高めに誘導し歳出削減をする政策を選択するのであれば、国民経済と国の財政に重大な悪影響を与える可能性があるのであるから、その政策を敢えて選択する理由を国民に納得できるまで説明する必要があるのではないか。
三 第2次答弁書には「政府としては、現在の極めて厳しい財政状況等を踏まえれば、経済成長と財政再建の両立に努め、安易な財政出動に頼らない安定的な経済財政運営を行うことが必要であると考えている。」と記されている。ところで、第1次答弁書では、個人所得税減税又は公共投資増額は公債等残高の国内総生産比率を低下させ、少なくても当初の1〜2年は財政再建に役立つことを認めている。そこで、再質問主意書で、3年目以降については短期金利引き下げをセットにして行えば、財政再建に役立つことが内閣府の計量モデルから結論されると指摘したところ、第2次答弁書ではモデルの誤差の問題に言及されている。しかし、モデルでは3年目には公債残高の増大で金利が上昇するため国内総生産に悪影響するとしている部分に関して何故誤差を持ち出すのか。それではモデル全体が誤差で囲まれていて、モデルを使って説明しようとすること自体を否定することになるのではないか。
3年目以降は誤差が大きくなって信頼性が落ちて、あまり参考にならないというのであれば、当初の1〜2年だけのデータを信頼すればよく、「金融政策とセットにした財政出動が財政を健全化する」ということを、この経済モデルは100%支持することになるのではないか。
四 再質問主意書では、日本銀行による短期金利引き上げはGDP成長率を押し下げ、デフレ脱却を阻害し、国・地方の債務残高のGDP比を押し上げるから政府の政策に逆行するものであると指摘した。これに関して第2次答弁書には誤差を考慮するようにと記している。これは、誤差のために符号が反対になる、すなわち短期金利引き上げは経済成長を押し上げ、デフレ脱却を助け、国・地方の債務残高のGDP比を下げる効果があるかもしれないという意味か。そうであれば、乗数の全てが、その符号さえ確かではないほどの深刻な問題を抱えており、シミュレーション全体が信頼に値しないということを意味するのではないか。
そうではなく、符号は正しいものの、その絶対値に誤差があるというだけなら、「日本銀行の短期金利引き上げは、経済成長を押し下げ、デフレ脱却を阻害し、国・地方の債務残高のGDP比を押し上げるから政府の政策に逆行するものである」という結論にいささかの変更をもたらすものではなく、短期金利引き上げは、成長力底上げを目指す政府の方針に逆らうものと言わざるをえないのではないか。
五 日本銀行の長期国債保有に関して日本銀行券の発行残高を上限にしていると、深刻な問題に遭遇する。電子マネーの増加は、必然的に日本銀行券の発行残高を減少させることになるからである。また、インフレ率が上昇し始めると、タンス預金が市場に出てくると大幅に日本銀行券の発行残高を減少させる。そのとき日本銀行は大量の国債を売らざるを得なくなり、それが景気を冷やし、デフレに逆戻りさせる。したがって、日本銀行の長期国債保有に関する自主規制は、日本銀行の重大な金融政策の足かせとなり、日本のデフレからの脱却と財政健全化を極めて困難にするのではないか。
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