日本経済復活の会
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政府との質疑応答
平成19年10月30日提出
経済成長を加速する具体的な方法に関する質問主意書
提出者 滝 実
平成18年度中にデフレを脱却するということは政府の公約であった。しかし、現実は平成18年度どころか、平成19年度中のデフレ脱却も難しくなったと言われている。一方で平成十九年十月二十六日の答弁書(内閣衆質一六八第一二三号)にて、政府は経済成長の重要性を述べておられた。このことに関連して質問する。
一 現在の日本の名目経済成長率は、OECD30か国の中で群を抜いて最低である。日本の経済成長をこのように低いものとしているのは、平成十九年四月二十七日の答弁書(内閣衆質一六六第一八七号)で政府がお認めになったように、デフレが続いているからである。成長を加速する方法を検討するには、過去の様々な内閣のどの政策が成功したのか、どの政策が失敗したのかを、冷静に分析することから始めるべきであると考える。図1は、日経平均株価を示している。現在は16000円程度であるが、1989年の最高値38915円と比べれば40%程度までに下がっている。アメリカ等諸外国では、1989年に比べれば株価は数倍に上昇していて、史上最高値を次々と更新しているのに日本経済の低迷のお陰で株価も低迷しているのは明らかである。
歴代内閣別の株価上昇率を年率に直して図2に示した。この図より、株価に関して言えば、小渕内閣の積極財政が最も優れていたということを示している。一人当たりの名目GDPの国際順位を図3で示したが、やはりここでも小渕内閣の積極財政が日本を豊かにしたことが分かる。
小渕内閣は1998年7月から2000年4月までであったが、発足時の1998年度の実質GDP成長率は−1%というひどい状態であったものの積極財政が功を奏し1999年度には0.9%、2000年度には3.0%にまで、経済は急回復した。―1%から+3%まで押し上げたという、これだけの経済の大躍進は、最近の内閣では見られなかったものである。内閣府の『日本21世紀ビジョン』では、2005年〜2040年の日本の平均実質GDP成長率が1%半ばとしている。これは緊縮財政が前提であり、積極財政に転換すれば、日本でも3%成長という高成長が実現するということである。
このような過去の実績によれば、デフレ下における積極財政は、国を豊かにすることを示していると思うが、同意するか。
過去の実績にもかかわらず内閣府の経済財政モデルのシュミレーションンは積極財政が寄与するはずの経済成長効果について低い評価しか示さないのは、そのような数値を示すような経済財政モデルに作り上げているとしか考えられない。そこでモデルの見直しをすべきではないか。
二 多くの人の懸念は、積極財政によって借金が増えるのではないかということである。小渕内閣の1999年度は新規国債発行額は37.5兆円、2000年度は34.6兆円だから、小泉内閣の時代と大差はない。実質3.0%まで伸ばせたのだから、あの積極財政を続けていたら、やがてデフレ脱却が可能となりデフレーターがプラス2%程度に、つまり名目5%成長が可能となったであろう。そうすれば国の債務のGDP比は減ってくる。GDPが5%増大すれば、それは債務のGDP比の分母が5%増大するから比自身は4.77%減るわけである。もし債務のGDP比を分子である債務を4.77%減少させようと思えば債務を4.77%減らさなければならない。800兆円の債務の4.77%は38兆円であり、1年間で38兆円の債務を減らすことはできない。つまり、積極財政で成長を加速すれば簡単に債務のGDP比を継続的に減らすことができるのに、緊縮財政では債務でGDP比をこのように継続的に減らすことは不可能である。このことに同意するか。
三 資産デフレにより失われた資産は千数百兆円だと言われている。阪神淡路大震災の被害は10兆円程度と言われており、その百倍以上の損害である。あの規模の大震災に100回以上も日本列島が襲われたほどの損失が出たのに、民間の力だけで立ち直れと言うのは無責任ではないか。図4では、銀行貸し出し残高の推移である。資産デフレで不動産価格が下落し担保価値が下がり、貸し出しが減った。これだけで、百数十兆円ものお金が市中から消えた。まるでブラックホールに吸い込まれるがごとく、お金が消えたわけだ。お金が消えれば、国民は物を買えなくなる。だから、物が売れなくなり、投げ売りが始まりデフレとなっている。このようなときに、消えたお金の穴埋めのため、お金を増やしてやれるのは国だけである。つまり、デフレ時には国には、消えたお金の穴埋めをする義務がある。それをしないから、いつまでたってもデフレ脱却ができず、お金がなければ設備投資もできず、旧式の機械をいつまでも使わざるを得なくなり、生産性が上がらないから、日本はどんどん貧乏になる。我々の次の世代に惨めな思いをさせたくなければ、一刻も早くデフレを脱却しなければならないと思うが、このことに同意するか。
四 2001年にノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツが2002年に来日し、財務省でも講演をした。彼の提言は政府貨幣を発行し、それを財源に減税等に使うということであった。デフレで消えたお金の穴埋めをするという意味では最も分かりやすい提案であり、これは政府の借金を増やさないし、むしろ減らすことができる。しかし、現実には、政府貨幣発行で国の歳入になるのは、貨幣流通残高の95%相当額のみと法律で決められており、これを変えないと効果が薄いということと、政府貨幣発行を一旦許すと歯止めがきかなくなるかもしれないという不安が残るということで、実現までのハードルは高い。一方、実現が容易で、これと同様な効果があるのが、日銀が長期国債を市場から買い入れ、それと同額の国債を発行し、それを財源として減税なり、財政拡大なりを行い、「消えたお金の穴埋め」をするということである。この提案はバーナンキFRB議長や、ノーベル経済学賞を受賞したサミュエルソン、クラインなど多数の経済学者等が提案している。日銀は、「保有する長期国債の残高の上限を日銀券発行残高とする」という自主規制を保持しているが、バーナンキ氏はこの自主規制を止めるよう勧めている。これらの提案をどのように考えるか。
五 このような消えたお金の穴埋め策は、小渕内閣や高橋是清蔵相等が成功裏に成し遂げた景気刺激策の再現であり、計量経済学に基づいた周到な準備を行っていれば決して過度のインフレに陥ることのないようにできるし、消えたお金の穴埋めという意味で、決して財政規律の崩壊などにあたらない。これにより日本経済が発展すれば円の価値も、日本国債の評価も上がるのは間違いないところであり日本経済の没落を止める特効薬になると思うが、このことに同意するか。
添付資料
図1
図1 日経平均株価
図2
図2 内閣別株式の年率の増加率
図3
図3 一人当たりの名目GDPの国際順位
図4
図4 銀行貸出残高
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