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政府との質疑応答
2005年2月17日の衆議院予算委員会の質疑に関するコメント
質疑者 小泉俊明委員
【小泉(俊)委員】
 小泉内閣になってから株価が大幅に下がっている。
【竹中国務大臣】
 最初の二年間で四十五%程度下がってその後五十数%上がった。
【コメント】
 最初の二年間では14000円に対して四十五%程度下がり、その後7607円に対し五十数%上がったということ。二つの数を比較するなら、基にする量を統一すべきで、両方共14000円を基にして、45%程度下がり、そのうち28%上がったというべきである。
日経平均株価
【小泉(俊)委員】
 銀行貸出残高が85ヶ月連続で減少している。
【竹中国務大臣】
 いままで銀行は貸しすぎていた。その調整が起きているだけ。
【コメント】
 企業に金が回らなくてもよいとしているのであれば、政府に景気を回復させようとする意欲が無いことを意味している。そんなことでは、いつまでたっても景気が良くなるわけがない。不良債権処理をすれば、実体経済に資金が回るようになると言ったのは嘘だったのか。
銀行の貸し出し残高
【小泉(俊)委員】
 小泉内閣になってから、国の借金(国債残高)が大幅に増えた。
【谷垣財務大臣】
 新規国債発行額は平成十七年度は平成十六年度より減少した。
【コメント】
 国の借金が急激に増え続けていることに変わりはない。小泉内閣になってから改善は見られているわけではない。
【小泉(俊)委員】
 小泉内閣になってから税収が減った。
【谷垣財務大臣】
 定額郵貯の集中満期により利子税収が約2.4兆円減り、先行減税を1.5兆円やったために税収が減った。
【コメント】
 減税など、都合の良い面だけ指摘し、消費税免税点の引き下げ等増税について触れていないのはフェアでない。税収はもともと60兆円あった。一時的な減少とはとても思えない。
一般会計税収
【小泉(俊)委員】
 小泉内閣発足以来、経済成長率は低く、改革の効果がでていない。
【竹中国務大臣】
 2004年度の名目成長率が1.4%となりよい方向に向かっている。
【コメント】
 米国の2004年度の名目経済成長率は6.6%であったし、中国では実質ですでに9.5%の伸びだ。1.4%という低成長率で満足すべきでない。
【小泉(俊)委員】
 内閣府の出した『改革と展望』では今後、ずっとこの低成長が続くとしている。それなのに失業率が減るとしているが、それはおかしい。
【竹中国務大臣】
 生産年齢人口が今でも毎年30万人程度減っているから、失業率は下がる。
【コメント】
 実際に本格的なマクロ計量モデルで計算すると、失業率は景気に大きく左右されることがわかる。このような低成長で、内閣府の予測するような失業率の減少は考えられない。
【小泉(俊)委員】
 『改革と展望』では、改革が進んだ場合と「非改革・停滞ケース」とを比べている。改革ケースでは名目金利が1.6%、非改革ケースでは名目金利が8.8%としている。これは余りにも非常識な数字だ。
【竹中国務大臣】
 非改革ケースで、日銀が金利をコントロールしようとしても、国債の残高が非常に高まって国債のリスクを投資家が高く見積もり、金利が8.8%に跳ね上がる。
【コメント】
 例えば改革ケースでは2007年度には公債残高は787.4兆円で名目長期金利は2.3%だが、非改革ケースでは2006年度に公債残高は761.6兆円で名目長期金利は3.1%となっている。非改革ケースのほうが債務残高が少ないのに金利は高くなっている。債務残高のGDP比で考えても同様なことになっていて、竹中大臣の説明は正当性を欠いている。
【小泉(俊)委員】
 米国は大規模減税、軍事費増大をやっているのに、債務残高のGDP比はたった1.3%しか増えていない。日本は緊縮財政をやっているのに、債務残高のGDP比は6.1%も増えている。なぜか分かりますか。
【竹中国務大臣】
 日本はプライマリーバランスの赤字幅が大きいからそうなっている。
【コメント】
 これは説明にならない。「プライマリーバランスの赤字幅が大きい」ということと、「債務残高のGDP比が大きく増える」こととはほとんど同じ事を言っているにすぎない。小泉委員の述べているように、その理由は米国は大規模減税により景気を良くし、かえって税収を増やしている。さらに名目GDPが6.6%も伸びたために債務残高のGDP比の伸びは小さくなっている。「減税をすれば国の借金が増える」という単純な考えが正しくないことを意味している。「国の借金を返すには経済成長しかない」ことを裏付けている。
【小泉(俊)委員】
 計量経済学の専門家による3つのシミュレーションがある。
1)フジグローバルモデリングシステム
2)DEMIOS
3)日経新聞社によるNEEDS日本経済モデル
この3つとも減税等の景気刺激策を取ったほうが、そうでないほうより景気が良くなりしかも国の債務のGDP比も小さくなるという結論になっている。
【竹中国務大臣】
 デルがどのようなストラクチャーになっているか勉強したいと思います。@については2010年から2011年にかけて1年で名目GDPが20%高まるというシナリオになっています。こんな打ち出の小槌があるんだったらぜひ使わせて頂きたいと思います。
【コメント】
 この論文は、政府の度重なるGDPのデータの変更のためにその解釈をAJER 05−1では若干混乱して使用していた。それを修正し最新のデータを入れ再計算をしたのが、AJER 05−1Rである。これには、竹中大臣が問題にしていた点(2010年から2011年にかけては名目GDPは大きく伸びているものの、実質GDPの伸びはほとんどない)は存在せず、今は増税でなく減税をすべきであるという根拠がより明確になった。
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