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論文
株式にっぽん5月15日号
日本再生のストラティジー 〜過去の景気対策が効かなかった理由を徹底分析〜
過去の景気対策が効かなかった理由を徹底分析
 過去に行われた景気対策は、1992年8月:11兆円、1993年4月:13兆円、1993年9月:6兆円、1994年2月:15兆円、1995年9月:14兆円、1998年4月:16兆円、1998年11月:27兆円、1999年11月:18兆円、2000年10月:11兆円、2001年12月:4兆円と合計135兆円であるが、それでもなお、景気は回復していない。多くの人は、景気対策は効かず、国の借金を増やすだけだと思っている。本当にそうなのかを調べるために、我が国で最も信頼されているシミュレーションプログラムの一つ【脚注】を使い計算してみる。株式にっぽん2003.3.15号(前論文とよぶ)でも説明したが、2000年から、一定規模の追加景気対策を5年間行ったと仮定する。景気対策も中身によっては多少異なる結果となるが、ここは法人税減税と公共工事がその中身だとする。
<図1>
図1 実質GDP
 図1に実質GDPの5年間の推移を示した。現状の政策では、ほとんど横ばいであるが、景気対策の規模が大きくなるとだんだんGDPは増加することが分かる。国・地方の債務残高のGDP比(借金の重み)を図2で示した。この図で分かることは、10兆円、20兆円の規模の景気対策では不十分で、景気は完全には回復せず、借金の重みは増え続けるということである。
 このグラフは、5年間同じ規模の景気対策を続けた場合だが、実際は少し景気が良くなるとすぐに景気対策を中断している。このようなやり方では図1と図2で分かるように、少し景気は良くなるものの直ぐに元に戻り、借金の重みは増え続ける。そして借金が増える原因が無意味な景気対策をしたからだと錯覚してしまうのである。
<図2>
図2 国・地方の債務残高/GDP
 しかし図1,2から、それが誤解であることはすぐ分かる。実際は景気対策は、実質GDPを押し上げる。10兆円だけ景気対策の規模を増やすと(つまり5年間で50兆円増やす)5年後の実質GDPは約30兆円増加(約5%)することが分かる。但し、規模が50兆円以上になると増加率は鈍ってくる。借金の重みは景気対策の規模が大きくなれば軽くなる。これは前論文でも述べたことだが、例えば60兆円の規模の景気対策を5年間続けると、法人企業利益は3倍に増加、日経平均は3万2千円にもなるから、税収が増え財政が健全化し、借金の重みが減っていくのである。インフレ率も2.6%となりデフレから脱却できる。
 このシミュレーションにより、多くの人が日本経済に関して持っている次のような考えは間違いであることが分かる。
1.景気対策はもはや効果がない。
【誤りである理由】 図1より、景気対策は極めて効果的であることが分かる。
2.国の借金を考えると、これ以上財政拡大は無理。
【誤りである理由】 財政を拡大すれば、借金の重みが減り、財政を縮小すれば借金の重みが増す。ということは、国の借金を考えるなら、直ちに財政を拡大しなければならない。
3.構造改革なくして景気回復なし。
【誤りである理由】 図1を見れば明らか。
4.財政を拡大すればハイパーインフレになる。
【誤りである理由】 毎年60兆円の景気対策を5年間続けてもインフレ率は僅か2.6%である。
5.財政規律を守らなければならないから財政を拡大はできない。
【誤りである理由】 財政を拡大すれば、財政が健全化することが示されたのだから、財政を拡大することこそ財政規律を守ることになる。
6.不良債権処理なくして景気回復なし。
【誤りである理由】 シミュレーションによれば、財政を拡大するだけで景気は回復する。結果として企業の経常利益が増加し、株も土地も値を戻してくるから不良債権処理は進む。そこで更に景気が良くなる。これは相乗効果である。
7.デフレの原因は中国から安い製品が入ってきたから。
【誤りである理由】 シミュレーションで分かるように財政拡大でデフレは止まる。中国製品の輸入を止めなくてもデフレは止まる。
【脚注】 本稿の試算にはNEEDS(日本経済新聞社の総合経済データバンク)のモデルを使用していますが得られた結果の解釈には日本経済新聞は関与していません。
東大英数理教室
小野盛司
(おのせいじ)
1946年広島県生まれ。1974年東大理学部(理論物理)で学位取得後、カリフォルニア大学等で研究と教育を行う。帰国後、ベストセラー教育ソフト『PC教育シリーズ』を開発、東大英数理教室等3つの会社を設立。経済に関しても、多くの経済学者や国会議員とのコンタクトを持ち日本経済復活の会を組織し、現在その代表。
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