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公共投資を増やせば、財政が健全化する
−内閣府のシミュレーションより明らかになった驚くべき事実− |
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近年、公共投資が減額され続けている。それは国の借金が増えすぎたためだという。しかし、平成17年4月に内閣府によって発表された「日本21世紀ビジョン」最終案により、公共投資を増やせば国の債務のGDP比は減少する、つまり国の借金が軽くなることが明かになった。図1でこれを示した。これは内閣府発表のデータから誰でも簡単に確かめることができる。 |
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積極型マネーサプライ固定: |
公共投資を2006年度以降実質GDPの1%相当(つまり約5兆円)継続的に拡大するシナリオである。マネーサプライを固定してある。 |
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積極型金利固定: |
公共投資を2006年度以降実質GDPの1%相当(つまり約5兆円)継続的に拡大するが短期金利を固定する。 |
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名目GDPの値と公債等残高の値は内閣府(2005a)の「基本ケース」のものを使い、積極型マネーサプライ固定シナリオの計算は内閣府『日本21世紀ビジョン版』(2005b)を使った。ただし、ここには金利を固定するシナリオは計算されていない。当然のことながら公共投資を増やすと景気が良くなりマネーサプライも増加する。そのためマネーサプライを固定するためには財政拡大と平行して金融引き締めを行い、景気を冷やさねばならない。 |
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一方、財政拡大と同時に金利を固定すると財政と金融が協調しながら景気を刺激をしたことになり、その効果はマネーサプライ固定の場合の約2倍である。例えば、堀雅博・青木大樹(2003)では公共投資増大の場合で短期金利固定の場合はマネーサプライを固定した場合の約2倍の効果があることを確かめている。この計算に従って、図1では積極型金利固定の場合は、積極型マネーサプライ固定の場合に比べ、景気刺激効果が2倍になるとして推測値をグラフにしてある。 |
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内閣府のシミュレーションにより次のことが明らかになった。 |
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もちろん、逆のことをすれば、すべて逆になる。これは極めて重要な結果であるので、念のために書いておく。内閣府のシミュレーションによれば |
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なお、内閣府(2005b)で発表されたシミュレーションは極めてお粗末なものと言わざるを得ない。例えば住宅投資の方程式を見るとR2Cの値は僅か0.068014である。R2Cの値は1に近ければ近いほど信頼度が増すのであり、このようなシミュレーションで使うには0.8以上であるべきである。0.06という途方もなく信頼度の低い方程式を使ったシミュレーションを発表することは、内閣府の信用を著しく落とす。ちなみに経済企画庁(1995)では住宅投資の方程式のR2Cは0.926となっている。住宅投資以外の方程式も実にお粗末だ。各方程式のR2Cの値の分布図を図2で示した。0.1以下という無茶苦茶な方程式が3つもあり、それがしかも住宅投資や消費関数など極めて重要な方程式であるというのだから、このシミュレーションは致命的な欠陥を持つというべきである。 |
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比較のために図3で経済企画庁(1995)のシミュレーションで使われた方程式のR2Cの分布を図3で示す。大部分の方程式のR2Cは0.9以上であり、最低でも0.5以上だから、その差は歴然である。内閣府(2005b)のシミュレーションがこれだけお粗末な結果であったということは、その職員の怠慢さを示しているというわけではなく、根本の仮説が間違えていたということである。つまり、内閣府(2005b)のシミュレーションが失敗した原因は『1%需要が伸びると、生産部門の多くで供給が追いつかなくなる。』という仮説が間違えていたということにある。これは潜在GDPを低く見積もりすぎたということである。1%注文が多く入るようになったとき、生産が追いつかないという会社がどれだけ現在の日本にあるだろうか。ほぼ皆無と言える。このシミュレーションで使われた方程式のR2Cの値が極めて低かったことから「日本21世紀ビジョン」で使われた低い潜在GDPの仮説は完全に否定された。日本の経済状況を説明できるモデルではないということが確認されたわけである。 |
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公共投資を減らす理由としてまことしやかに語られるのが、公共投資の予算に占める割合の国際比較である。しかし、インフレに悩む国とデフレに悩む国では事情が全く異なる。インフレで悩む国で公共投資をやればインフレが悪化するだけである。比較するとすれば、デフレで悩んでいた1929年頃の日本の経済と比較すべきである。1932年の高橋是清が行った積極財政により日本はデフレからの脱却に成功したことはよく知られている。 |
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内閣府(2005a) |
経済財政モデル(第一次改訂版)資料集
平成17年4月内閣府計量分析室 |
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内閣府(2005b) |
日本経済中長期展望モデル(日本21世紀ビジョン版)資料集
平成17年4月内閣府計量分析室 |
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堀雅博・青木大樹(2003) |
内閣府経済社会総合研究所ESRI
Discussion Paper Series No.121 |
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経済企画庁(1995) |
第5次版EPA世界経済モデル−基本構造と乗数分析− |
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